冷気と静寂の中で

 みなさんこんにちは、わらみんです!

 いよいよラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 NEXT SKY」公開まであと3日ですね!(もうそんなところまで来たのか…!)

 ついに始まる虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の新展開に私自身、今から待ちきれません!!

 さて今回ですが、OVA公開までのカウントダウン企画「#Melody_is_TOKIMEKI」と題しましたアニメ劇伴に焦点を当てた企画に参加させていただけることになりました!

 詳細はこちらになります


 本日6月20日は私わらみんが担当させていただきます!


 私が担当する劇伴はこちら


 「Crossing」


 ピアノとギターが特に印象的な(※個人の主観です)この劇伴は2期9話2期11話で使用されています。

 今回は主に2期9話「The Sky I Can't Reach」2期11話「過去・未来・イマ」の2つの視点からこの劇伴について触れていきたいと思います(都合上多分他の話にも触れることになると思う)。

 皆さん、ぜひ最後までよろしくお願いいたします!

 

①「Crossing」という劇伴について

 まずは、この曲に対して私自身がどのような感想を持ったかをできるだけ簡潔に述べていきます。2期11話後半での印象が特に強いため、以下の感想は11話を中心としたものになりますが、ご容赦ください。

 私が特に「Crossing」に惹かれた部分は3つあります。


 1つ目は最初のピアノ。私がイントロ部分で感じたのは「冷気」でした。聴こえてきたピアノの音はどこか強く、しかし硬く。寒空とこれほどマッチしている音があるだろうかというくらいには聞き入っていました。


 2つ目は中盤。どこか優しい音色ですが、一定のリズムで淡々と音楽が進んでいっており、どこか寂しささえ感じます。それはまるで容赦なく過ぎ去る時間のように。まるで果林が時間の流れに置いていかれているような描写さえ感じました。


 3つ目は最後のギター。ここで私が感じたのは「温かさ」でした。海浜公園で物思いにふけている果林のもとにエマ彼方が駆け付けたタイミングでこのフレーズが流れており、沈んでしまいそうになっていた果林に対する一筋の光を表現しているように思えました。


 この劇伴について、作曲者の遠藤ナオキさんはオフィシャルブックで次のように語られていました。

 

この曲は最初、「逍遥」というオーダーがありました。
フラフラとほっつき歩く--という意味ですね。

(「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会TVアニメオフィシャルブック2」より引用)

 

 2期11話後半の果林視点で進んでいく物語を振り返ると、「逍遥」というタイトルでもとてもふさわしいように感じます。ですがタイトルは「Crossing」

 なぜこのタイトルになったのでしょうか。2期9話で流れた「Crossing」と2期11話で流れた「Crossing」。確実にニュアンスは違うと思います。ここからは、それぞれの「Crossing」が持つ意味を考えていきましょう。

②意味その1 「すれ違い」

 「曲、できたんだよ!」ミアがランジュを引き留めるために作ったランジュのための曲。その完成を璃奈達に告げた際に流れたのが1箇所目です(2期9話「The Sky I Can't Reach」)。ミアのテンションとは裏腹にバックで流れているのはピアノの冷たい音色。あまりの温度差に当時は戸惑いを隠せませんでした。「もっと明るい曲があったんじゃないのか?」と疑問に思ったほどです。

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 9話における「Crossing」「すれ違い」という意味で使われているのではないかと考えます。

 では、何と何が「すれ違い」なのでしょうか?

 私は「ミアの気持ち」と「ランジュの気持ち」と捉えることもできるし、「ミアの口から出た言葉」と「ミアの行動(本心)」と捉えることもできるんじゃないかって思います。

 

どう?キミのために書いた、キミのための最高の一曲だ!

(テレビアニメ2期9話「The Sky I Can't Reach」より引用)


 口でこそ「ランジュのため」と言っていますが、ミアの本心は「ランジュに認められたい」がために「ミア・テイラーのため」の曲を作っていたのではないかなって思っています。これがミアの言葉と本心の「すれ違い」です。

 ランジュとミアのすれ違いについては、ここでは「ランジュに認めてもらい、帰国を踏みとどまってくれると思っていたミアの心」「ミアの曲が響かなかったランジュの心」と言えるでしょうか。

 直後に流れた劇伴「凍結した心」はミアの心を表しているのではないかと考えています。

 言葉と本心が乖離してランジュに認められなかった結果、侑や璃奈の気遣いに対して「放っておいてくれ」「うるさいな」という言葉が反射的に出てしまうほどに作曲家ミア・テイラーの心は一度凍り付いてしまったというのが私の考える2期9話の「Crossing」→「凍結した心」の一連の流れです。

 また、7話アバンの1曲目に流れている劇伴も「凍結した心」なのですが、あの劇伴の前にももしかしたら「Crossing」が入れることが出来るのかもしれないなって思ってます。


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 目の前で姉の夢が砕け散る瞬間を見た栞子。それがきっかけで栞子の「スクールアイドルの夢」「凍り付いて」しまう事になります。

 この場面ですれ違いになっているものは「薫子の気持ち」と「栞子の気持ち」と言っていいのではないでしょうか。

 そう考えた理由は「EMOTION」直前のシーンにあります。

 

夢を叶えようと三年間努力し続けて、最後は泣いていたんです!後悔していたんです!

してないよ、後悔なんて。

確かにあの時は悔しかった。でも今では、やってよかったって思ってる!

(テレビアニメ2期7話「夢の記憶」より引用)

 

 「やってよかった」と思っていた薫子に対して、何年もの間「姉は後悔していた」と思い込んでいた栞子。

 それによって栞子のスクールアイドルの夢は「凍り付く」ことになってしまいました。

 7話と9話の展開を踏まえたうえでの私の考えをまとめると、「すれ違い」すなわち「Crossing」が起きることが「凍結した心」が流れる条件になるのではないかという結論です。

③意味その2 「渡航

 間近に控えた卒業に対する悲しみ、卒業後の未来に対する不安、様々な想いを抱えて鈍色の空の下、お台場を彷徨う果林。

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 前項で劇伴「凍結した心」について触れましたが、11話でもし果林のもとにエマと彼方が駆け付けることが無ければ、未来に対する恐怖を抱えたまま果林の心は冬のお台場の中に凍り付いてしまっていたのではないかと思っています。

 ですが、「凍結した心」が流れた2期9話と決定的に違うことがあります。それが「引き上げてくれる者の存在」です。2期11話では未来に対する不安に沈んでしまう前に彼方とエマが駆け付けて引き上げてくれたからこそ、果林は自分の胸中を打ち明けることができ、「イマ」を全力で駆けぬける決意ができたのではないでしょうか。


 この話における「Crossing」「航海」という意味で使われていると考えます。実はCrossingには「航海」という訳も存在しているんです。調べてみてびっくりしましたね…

 おそらく海を「横切る」というニュアンスなのかなって思っているのですが、お台場において、海を横切る手段といえば何が思い浮かぶでしょうか?

 私は、その手段こそが「レインボーブリッジ」ではないかと思っています。

 果林が降りた駅は、ゆりかもめお台場海浜公園なのですが、この駅はレインボーブリッジを渡る直前の駅です。この描写と合わせて流れた「Crossing」は、レインボーブリッジの向こう側にある「未来」へと向かうことを恐れていた果林の心境を表していたのではないのかなと考えています。

④共通する意味

 さてここまで、2期9話と2期11話をメインに(時々2期7話)「Crossing」という曲について触れていきました。そして「Crossing」の後に流れた劇伴は「凍結した心」「想い、花ひらく時」の2つがあると述べました。

 一見すると、「Crossing」を境目にその後のメンバー達の動き次第でストーリーが分岐するようにも思えます。ですが、2期7話と9話で「凍結した心」が流れたの後の展開はどうだったでしょうか?

 7話では栞子が自分の気持ちに蓋をしてしまうに至った経緯、そして薫子から事情を聞いた同好会のメンバーが栞子を説得しようと動き出すシーンが描かれています。ここで流れていた劇伴は「トキメキを信じて」「始めようよ!」です。

 また、9話ではミアが璃奈に自身の過去を打ち明けたあとで自分の本当の想いをさらけ出し、差し伸べられた璃奈の手を今度は拒絶することなく掴んでいます。ここで流れていた劇伴は「I'm here」です。私はこの3つの劇伴は「凍結した心」を溶かすポジションの劇伴だと思っています。

 テーマとなった劇伴からかなり話が逸れてしまいましたが、「Crossing」という劇伴がどういった立ち位置なのかを整理するために簡易的に図を使って考えていきましょう。


 この図においては「Crossing」をスタート地点として考えています。

 先程と重複した内容になりますが、まず第一段階として「想いのすれ違い」「未来へ進むことに対する恐怖」といったような事象が起きた場合に「Crossing」が流れます。そして引き上げてくれる者の存在があれば「想い、花ひらく時」へ、いなければ「凍結した心」のルートへと進みます。

 ですが「凍結した心」ルートに進んでも、あくまで心が「凍り付いた」だけに過ぎないんです。「温めて溶かす」きっかけや人物さえ存在すれば、再び心は動き始めます。そして心が凍り付く前だろうが後だろうがどちらのシーンでも「温度が下がった者に対して、温めてくれる存在」はいたんです。ミアにとっての璃奈だったり、果林にとってのエマや彼方だったり(上図の「I'm here」「始めようよ!」が所謂「凍り付いた心を溶かす劇伴」になります)。

 そして9話でランジュを引き留めようとミア達が動いた結果ランジュが同好会に加入するに至り、11話で果林は同好会の1stライブ開催を提案します。これが上の図でいう「大きな展開」に当たります。

 ここまでを踏まえて考えると、私が思う劇伴「Crossing」の本当の意味は「予感」だと思っています(本来の意味にそういったものは無いのですが)。

 上の図では一度は条件によって劇伴が分岐しているのですが、その後に大きな展開が待ち受けているという結果は変わらないんです。少々強引になってしまうのですが、極端な話「Crossing」が流れ始めた時点で既に次なる大きな展開の布石が打たれたといっても過言ではないというのが私なりの考えです(わかりにくい説明になってしまって申し訳ないです…)

⑤劇伴を耳以外でも感じる

 突然ですが、少しだけとある遠征時の思い出話にお付き合いをよろしくお願いします。

 次の4枚の写真を見てください


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 これらの写真は全て同じ日に撮っています。

 実は訳あってライブが開催されていないときのお台場にお邪魔させていただいてました。撮影日は4月中旬。ユニットライブが終わっておおよそ1か月、そして「あの日」から2週間ほど経った時期です。

 朝早い時間であり、イベントの間の空白期間だったということもあったのか、この時のお台場は静寂に包まれていました。

 「静寂」は少し言い過ぎましたね。正しく表現するなら「限りなく静寂に近い雰囲気」といったところでしょうか。それでも、聴こえてくるのは雨の音と遠くのほうで走っているゆりかもめの音だけです。

 祭りの後の静けさが残るお台場で、私は彼女たちの足跡を探して数時間彷徨い続けました。コラボ期間は終わっていたため、有明ガーデンには虹ヶ咲に関係するものはもう置かれていませんでした。ユニットライブは4ユニットとも公演を終えていたため、ガーデンシアターに来るまでのモニターには彼女たちはもう映っていませんでした。

 私もまた、当時の果林と同じように容赦ない時の流れと季節の移り変わりに置いていかれそうになっていて、不安の中に沈んでしまいそうになっていました。

 丁度その時に私の頭の中で無意識のうちに再生されたのが「Crossing」だったんです。今思い返せば、2期11話での果林の心境とお台場訪問当時の私の心境は似たようなものがあったのかもしれませんね。

 ですが私にもまた、引き上げてくれる存在がいました。それが同好会のメンバー達、そして私と同じように「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」を愛するオタクのみんなです。

 お台場ゲーマーズに立ち寄った時、変わらず虹ヶ咲はそこに存在していたことで気がついたんです。

 「たとえイベントやコラボが無くても同好会のメンバーがお台場に存在するという事実が揺らぐことは無いし、仮にお台場そのものが無くなったとしてもそこで虹ヶ咲と共にたくさんの思い出を共に作ったという事実は決して消えることはない」と。

 そういったことがあって私は改めて実感することが出来たんです。やっぱり私は虹ヶ咲が好きなんだって。そして、この時期には決定していたOVAに向けて更に熱が高まりました。

⑥最後に

 さて本日は、「Crossing」という劇伴について私の考えを述べていきました。途中で他の劇伴にもたくさん焦点を当てて進んでいきましたが、今回書かせていただいたものは全て根底に「Crossing」があります。

 先程も述べましたが、「想い、花ひらく時」ルートを辿ろうが、「凍結した心」ルートを辿ろうが、結局行きつく先にあるのは「再起」「更なる巨大な展開」なんです。そう思って改めてこの劇伴を聴くと、どこか予感めいたものさえ感じさせてくれます。そんな寂しくも温かく、熱くなれる要素も含めて私は「Crossing」が大好きです

 ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございました。

 ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 NEXT SKYまであと3日

 明日の担当はハルさん(@rainbowdreams_0)です!

⑦演奏動画

 今回の劇伴記事リレーですが、サプライズとして素敵な演奏動画がありますので、ぜひ見ていただけると嬉しいです!